太くなったベゼルが示すアップルの開発プロセスの巧みさ〜iPhoneXR〜

Photo by Apple(以下同じ)

iPhoneXRのデザインについて、いつもとは少し違うテイストで解説してみました。



スペクトル


太陽から放たれた光はプリズムによって分光されることで、虹色に分散します。こうして得られる光の強度の分布はスペクトルと呼ばれます。

iPhoneXRのCMタイトルが「スペクトル」なのはXRのカラーラインナップをこのスペクトルに例えているのでしょう。太陽光のスペクトルとが虹色であることを思えば、XRの「R」が「Rainbow」に由来するというも妥当な解釈となります(え?フィルシラーが何か言ってるって?いやいや、解釈というのはこういうものなんです)。




公式の紹介動画ではiPhoneXのビジョンを広げて3つの製品を作った、という趣旨の説明をしています。こうして生まれた新製品は、あたかもiPhoneXがプリズムによって分散したかのように、iPhoneXに内包されていた可能性を具現化しています。

その中でiPhone XRはiPhone Xとほぼ同一の形状を持ちながら、カラーリングと素材、表面処理の違いによって全く異なる印象を生み出すことに成功しました。

XRはマーケティング上、XSよりも下位に位置付けられていますが、プロダクトデザインの段階では必ずしも廉価版を意識してデザインしているわけではないと思います。モノクロのXSは万人に受け入れられるのですが、赤や青の色使いを好むユーザーも当然存在するからです。彼らにとってはXSとXRは並列に比較されているはずです。


iPodしかり、iPhone5cしかり、カラフルな端末はファッションと結びつく形で存在してきました。面白いのは、iPhone5cでもXRでも、服飾に見られるような合理性によらない形状は用いられず、たんに色や素材の違いのみによってファッショ性をデザインに取り込んでいる点です。たとえばグーグルのPixel3では、背面が一枚のガラスになったにもかかわらず、2種類の表面処理を施すことでツートンを生じさせています。これはミニマリズム的には疑問であり、そこには必ずしも合理性を追求しないファッションデザインの思考が見られます。


太くなったベゼル

XRのデザインで興味深いのは、ベゼルがXやXSに比べて太くなった事です。これはディスプレイの種類が違うという技術的な問題に由来するものにも見えます(ギズモードがいうには、液晶パネルコネクターの幅)。しかし本当にそれだけでしょうか。






単刀直入に言うと、実は当ブログではこの太いベゼルを「予言」していました。
その記事を以下に引用します。

2.5Dガラスを使ったベゼルデザインについてはiPhone 6以降の端末を見ていたほうが分かりやすいでしょう。それ以外で挙げるなら、以下のiDROPNEWSによる廉価版iPhone Xのコンセプト画像が近いです(Xの廉価版のコンセプトとして賛同するものではありません)。
出典:iDROPNEWS
ただ、ベゼルを構成するガラスの厚みは増やしたほうがいいと思います(狭額縁をやめるのではなく、厚みに占めるガラスパーツの割合を増やすという意味です。AppleWatchを見ると分かりやすいです。AppleWatchは側面から見ると、iPhoneよりもガラス部分に厚みがあります)。そうしないと、狭額縁のベゼルでは、ベゼルの黒が少なく、後述するベゼルと本体の色のコントラストが殆どなくなってしまいます
この当時は、iPhoneXと同じサイズでカラフルなiPhoneを作ることを想定していたので、回りくどい表現をしていますが、ようはベゼルはXのときよりも太くしないといけないよ、ということです。

引用文の繰り返しになりますが、これは筐体とベゼルの色にコントラストを生じさせるためのものです。

iPhoneXRは5cほどには「コントラスト」を意識してデザインされていないように見えますが、コントラストはデザインにおける重要な技法として様々な場面で用いられるものであり、色を重視しているXRのベゼルデザインをコントラストのために微調整したとしても不思議ではありません。

開発プロセスの巧みさ


アップルはデザインがたんなる外装に留まらず、端末の設計と不可分一体になっている点がウリです。この太いベゼルも、①初めから太くデザインしたのか、②技術的に太いベゼルに合うようにデザインしたのか、がハッキリしません。上記2では①説を推していますが、このどちらか分からないという開発プロセスの巧みさを楽しむのも一つの在り方だと思います。





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