シンメトリーで読み解くiPhone4

Photo by Apple

こんにちは。ChoKaiSekiです。

iPhone4は、歴代iPhoneの中でも外観の人気が高いモデルですが、デザイン的にも他のiPhoneとは似ていない点が興味深いiPhoneです。当然デザインの説明も他のiPhoneとは異なるものになっています。




1技術的な成約による説明とそのあやまり

まず、技術的な制約から生じた外観デザインであるという仮説と、その誤りについて説明しておきます。

(1)せりだし

iPhone4を側面から見ると、フロントガラスが筐体から前にせり出したような形をしています。これはiPhone5(画像は同じ形状のSE)と比較するとよくわかります。
iPhone5でもわずかながら、フロントガラスが筐体から前にせり出しています。これは類似のデザインを採用しているiPadには見られないものですので、意図的なものではなく、技術的にそうせざるをえなかったものと言えます。

iPhone4側面/photo by Apple
違和感がないデザインなので気づきにくいが、これはフロントパネルのせり出しといえる

iPhone SE側面/photo by Apple
ディスプレイのパネルが若干前にせり出している
(黒系のiPhoneの画像がほしかったのですが、見つけられず、たいへん見づらくなっています)

斜めから見たiPhone SE。こちらのほうがディスプレイのせり出しがわかりやすいかもしれない

iPadにはディスプレイパネルのせり出しはない

このことから、フロントガラスが筐体にピッタリはめられないことから、結果的に前後のガラス板で筐体を挟み込んだかのようなデザインになったという仮設が成り立ちます。

(2)アンテナの構造による説明

iPhone4の技術的な特徴として、筐体を構成するステンレススチールのフレームが、通信用のアンテナとして機能している点が挙げられます。

このアンテナ兼フレームが筐体として存在し、これを前後からパネルで挟むことで筐体を完成させた結果、サンドイッチ形状になったという説も考えられます。これは、アンテナ兼フレームが不要なら、背面もステンレススチールで一体形成するといった選択肢(iPhone5以降に近いですね)がとり得たはずで、サンドイッチ形状にする必要はなかったのではないか、という推測が前提です。

(3)技術的な制約説が間違いである理由

理由は明快です。
というのも、初代iPhoneのデザインを検討している試作段階から、iPhone4類似のサンドイッチデザインは存在したからです。この時点では技術的な制約はあまり考慮されずに自由にデザインされていたため、技術的な制約は根拠になりえないのです。

photo by businessinsider
iPhone4に類似した試作品

ただ、iPhone4の登場タイミングが上記の技術的な制約の中でiPhoneをデザインするのに適していた、という可能性はあると思います。

2 表裏対称性

(1)

サンドイッチデザインの特徴として、表裏が対称になっている点が挙げられます。iPhoneは正面から見た場合に裏表ともに上下と左右がそれぞれ対称になっていますし、試作段階でもほとんどのデザインはそうなっていました。しかし、裏表が対称になっているものは殆どありません。このシンメトリーなデザインがiPhone4の核心と言えます。

photo by business-insider
iPhone4に類似した試作品。表裏が対称的なデザインになっているといえる

photo by businessinsider

photo by businessinsider
iPhone5に似ている試作品。裏表は同一デザインではない
他のデザインに表裏の対称性がないのは、試作段階でも筐体とフロントパネルの組み合わせが想定されていたため、裏表が対称になるというデザインは思いつきにくかったからだと考えられます。

その点で、上下、左右、裏表が対称になっているサンドイッチデザインは特に斬新だったと思われます。当然、側面から見た場合も上下、左右、表裏が対称になっています。
ようするにどこから見ても対称になっているのです

ちなみに、フロントパネル側、つまり表面のデザインに関しては、黒一色にホームボタンを配置したものか、アルミニウム素材をくり抜いてディスプレイモジュールをはめ込んだようなデザイン(上記画像参照)の2種類が検討されていたそうです。表面にアルミニウム素材が見えているデザインは当時検討されていた製造法上の問題に由来するもので、そうした製造過程を経ないサンドイッチデザインは全面が必然的に黒一色になったようです。

この説明は一見、当たり前の説明にも見えるかもしれません。しかし、iPhone4のデザインについて、ステンレススチールとガラスの組み合わせであることや、外観がサンドイッチ的な構造になっていることに触れる記事は多いものの、表裏が対称である点(あるいは全てが対称である点)に着目してデザインを説明する見解はこれまで無かったと思います。


(2)

また、この説明であれば、iPhone4で初めてホワイトベゼルが採用された理由も説明できます。iPhone3GSまではディスプレイベゼルは、ホワイトモデルであってもブラックでした。 しかし、表裏対称を取り入れたサンドイッチデザインで、ホワイトモデルをラインナップに加えるのであれば、表裏のデザインを対称にするためにホワイトベゼルにせざるを得ないのです。

(3)

この説明には疑問もあります。この説明では必ずしもサンドイッチデザインである必要がない点に問題があります。要するに、黒一色、白一色といったデザインでも良かったはずです。

これは、アルミニウムと電波を通す樹脂素材の組み合わせが試作段階から想定されていたために、単色はあり得なかったとも考えられます。2色使いで表裏対称のデザインであれば、サンドイッチデザインになっても不思議ではありません。

また具体的にiPhone4をデザインする段階では、先に説明した技術的制約2説も考慮されてサンドイッチ構造になった可能性はあります。



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