iPhoneの本質を考えたら曲がるディスプレイの意味がわかってきた〜iPhone6のデザインのなぜ〜


こんにちは。ChoKaiSekiです。
この記事を読んでいるあなた、「最近のiPhoneは全然デザインチェンジしない」とか思ってたりしませんか?

それにはちゃんと理由があります。しかもその答えは曲がるiPhoneへつながっています。



iPhone6のデザインのなぜ

なぜiPhoneのデザインは変わらないのか。それを理解するには、まず今のiPhoneのデザインを理解する必要があります。当該記事の執筆時点でのiPhoneはiPhone Xです。このiPhoneのデザインは基本的にiPhone 6から変わっていません。そこで、iPhone6のデザインが何故このようなデザインなのか。それを解説しましょう。

そのためにはまず、スマートフォンの本質を考える必要があります。スマホの必要最小限といってもかまいません。スマホに最小限必要な要素とは何でしょうか。

それは、タッチディスプレイです。ディスプレイが無いとしたら、電話ではあるかも知れませんが、スマートフォンではありません。さらにそれはタッチ可能でなければなりません。それこそが、「再発明」されたスマホの本質だからです。逆にそれ以外は、キーボードだろうが、カメラだろうが、何であれ、本質ではありません。ホームボタンですら。

以上からすると、一枚の紙のようなタッチスクリーンこそがスマホの本質です。


しかし現実は……

もっとも、現実には紙のような厚みの端末は作れません。そこで、スマホを抽象化した形は、板状の直方体です。かまぼこ板を想像してください。

現実世界で存在しうるもっとも単純なスマホは、板状の直方体の形をとっています。もっとも、そのような端末は、エッジが鋭すぎて手に持てるような代物ではありません。なんらかのデザインによってエッジを処理する必要があります。

そこでアップルは「角を丸める」というデザインを採りました。直方体の全ての面の角を丸めるわけです。それがiPhone6です。iPhone6はどの面から見ても角が滑らかに丸められています。

iPhone6は全ての角がなめらかに丸められている。

旧モデルはどうなのよ

過去のiPhoneと比べてみましょう。

iPhone5は、側面から見ると、長方形、厳密には角を斜めに切り落とした長方形です。
iPhone5は側面が長方形で丸くない


iPhone4は側面からみると、長方形を3つ組合せたような(サンドイッチを横から見たような)形状です。


iPhone3Gは背面がいびつにラウンドしています。


以上と比べると、iPhone6がもっともシンプルで合理的です。この形状に代わる合理的な形状は単純な長方形の直方体以外にありません。単純な長方形が選択し得ない以上、これが最善の形状です。




もちろん、角を丸めないで、エッジを斜めに切り落とす(切れ端が三角形になる)という選択肢もあります。とはいえ、そういった形状は、せいぜい角を丸めるデザインと同列ではあっても、より良いわけではありません。iPhone5のエッジの処理はそれに近いものです。

ちなみに試作品にも類似のものが。
Business insider
iPhoneの試作品には、角を斜めに切り落としたデザインも観られる。

ジョナサンアイブはどう説明したか

iPhone 6のデザインについては、ジョナサンアイブがインタビューに答えて説明した事があります。

iPhone 6を初代のiPhoneのように丸いふち(エッジ)に戻したのはなぜですか? 角ばっていた方が簡単につかめます。

アイブ氏「数年前、大きな画面をもったプロトタイプを製作しました。ノートブックみたいに大きな画面を持つというのは興味深い特徴でした。しかしそれらは不格好だったので、結果はお粗末なものでした。私たちの競合他社が依然としてそうであるようにね。そのとき、魅力的な製品にするために、画面を大型化するのと同時にたくさんのことをする必要があるとわたしたちは認識したんです。iPhone 6 の丸いふちは、快適さと、幅広さをあまり感じないようにするために必要だったんです。」
Appleのジョナサン・アイブ氏が語るiPhone 6・Apple Watch・ジョブズ・模倣Apple's Design Boss Jony Ive Gives A Rare On-Stage Interview


ここでは、エッジを丸く処理することで、大型化した端末を実際に手に持った時の「快適さ」を向上させ、さらに外観上の「幅広」な印象を緩和する意味があったという事がわかります。

iPhone 6のデザインは、角を丸めるというシンプルな処理がさまざまなデザイン上の問題を調和的に解決している見事な例です。

余談

余談ですが、この角を丸めたデザインは「溶けた飴のようなデザイン」を起源とするinforbarシリーズ初のスマホであるINFOBAR A01がiPhoneより先に採用していました。技術的な制約のために背面が膨らんだデザインになっているのが惜しいです。
横から見ると、iPhone6にそっくりだ

結論:iPhone6はスマホデザインの完成形

すでにアップルはiPhone6から4年に渡って実質的に同じデザインを使用していますが、それは、上で見たように、そのデザインが極めて合理的で、これ以上のデザインが存在しないからです。そうです。これが「iPhoneのデザインが変わらない」理由です。

ジェミノイドを作った石黒教授はかつて、iPhoneのデザインがもし完璧なら2年に1回デザインチェンジが起こるはずがないと言いましたが、4年も変わらなくなったところを見るに、いよいよ完璧の域に近づいているのではないかと思うわけです。

次なるスマホのかたち

もっともこれは、最初に定義した、スマートフォン必要最小限が正しいならば、という前提が維持されている場合の話です。スマホの必要最小限は、一枚の紙のようなスクリーンでした。それがスマホをスマホならしめているわけですが、それが変われば、デザインも変わります。

一枚の紙のような形状以外に何があるのでしょうか?

その答えが、曲がるディスプレイです。もしもスクリーンを折り曲げることができるのだとしたら、スマホは板状の長方形に限られないはずです。折り曲げたディスプレイは、横から見ると「コの字型」かもしれません。

下のような報道がありましたが、上記を踏まえればその意味がわかるというものです。
 Appleがいつの日か、完全に折り曲げ可能な「iPhone」を作り出すかもしれない。少なくとも、最近認められた特許によれば、その可能性はある。米特許商標庁(USPTO)が米国時間1月6日に与えたこの特許は、「フレキシブルな電子デバイス」と題されており、内部と外側の両方に折り曲げ可能な部品が使われたモバイルデバイスと説明されている。
曲がる「iPhone」が実現する?--アップル、フレキシブルなデバイスの特許を取得

かつて携帯電話を再発明したときのように、スマホを再発明して、タッチディスプレイを何か別のもの(曲がるディスプレイかも知れないし、メガネ型かもしれない)に置き換えなければならないところまで来ているのだと思います。

それが成功するかどうかはまた別の話ですが。


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