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今回はようやく日本にやってきたHomePodのデザインを解説します。
機能面
HomePodの特徴をおさらいしましょう。要するに高音質のスピーカー。でもそれだけではありません。まず、小型です。ギリギリ片手で持てます。見た目も落ち着いているので、壁際に置いたら、その存在を忘れるほどでしょう。
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ここには、「音楽を聴く」というスピーカーの体験だけが存在します。ユーザーがそれ以外のことを気にする必要はありません。これ以上ないぐらいシンプルです。
ところで、スマートフォンの本質は、1枚の紙のようなタッチスクリーンであり、そこに厚みは必要ないという話を別の記事でしたことがあります。これをスピーカーについていえば、音がユーザーに届けばいいのであって、スピーカーの形は本来は不要です。必要なのは「音楽が聴こえる」という体験であって、形ではありません。特にスピーカーはスマホと違って、画面を操作するといった動作が必要ないので、触れる形が存在している必要すらないのです。姿は無くとも音が聴こえればいいわけです。
この点、HomePodは、ユーザーがスピーカーの存在を気にしなくてもいいようになっていることで、音楽を聴くという体験とスピーカー本体の存在が切り離されています。おかしな表現ですが、これによりユーザーは体験だけを味わうことができます。音楽を聴くという体験だけが存在するという意味で、HomePodはスピーカーとして、究極にシンプルです。
アップルの言葉を借りれば、「デバイスが体験の中に消えてしまうような」(出典:iPhoneX公式ページ)製品になっているのです。
この開発は基本的にエンジニア主導であったようですが、結果的には、非常にアップルらしい製品になったと言えます。
外観について
(1)HomePodは全体がメッシュのファブリックで覆われています。メッシュのファブリックは昔からスピーカーユニットを覆うための素材として広く利用されており、これを見ればスピーカーだとわかるほど広く知られた要素です。この素材はもちろんスマートスピーカーにおいても、広く用いられています。
中でもHomePodのメッシュは形状それ自体が非常に美しく、海外のアップルストア店内で壁一面にメッシュ部分を拡大した画像が映し出されていたこともありました。
機能面においてこれ以上ないほどに純粋なスピーカーを実現したHomePodは、外見においても、全体をこのメッシュのファブリックで覆うことによって、HomePodがスピーカーであることを見る者に対して明確に示しています。
また、黒と白の二色から選べ、部屋に溶け込ませたり、そうでなくても部屋に馴染む外観と色使いになっています。
(2)
今のところスマートスピーカーは、あくまでスピーカーユニットの周辺をファブリック素材で覆うのみで、全体がファブリック素材で覆われている事は稀です。
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デザインを単なる外装の言い換えとしてしか見ていないメーカーは、スピーカーユニットは布で覆い、それ以外はプラスチックの外装をつけておけばいいという安易な発想で製品を作っていると思われます。ですから、全体がファブリック素材で覆われている事自体が既に驚くべき事です。
特に、アップル製品といえばアルミニウムの外装の製品が想起されるでしょう。HomePodも、例えば(ゴミ箱とも評された)Mac Proのようにアルミニウム素材で覆われていたとしても不思議ではありません。
このHomePodのデザインの凄さは、メッシュのファブリックを剥がす事でより明確になります。
メッシュを剥ぐと、内側は黒いプラスチックの樽のような形になっています。実際に音が出ているのは、上下の比較的小さなスリット部分からだけです。側面にあるのはせいぜいマイクのための小さな穴だけです。繰り返しますが、あとは全てプラスチックのパーツで覆われています。
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ファブリック素材の外装なしでは、本体を構成する要素は、樽状の本体モジュールと、その上下に配置されたスピーカー部分からなっていましたが、これをファブリック素材で覆うことにより、単一の要素で構成されたデバイスとなります。このようにして、デバイスを構成する要素を(視覚的に)減らしているという点にもこのデザインの秀逸さが現れています。